Little AngelPretty devil
           〜ルイヒル年の差パラレル

      “今年も…!”
 


近隣諸国との国交不安とか、
某 米軍関係の無体とか。
陰惨な連続殺人事件だの、
不審火が転じて連続放火による人死にだの、
衆議院の解散総選挙だの、
何とも不景気な話しか聞かれずで終わった昨年であり。
そんなせいだろか、
初競りの本マグロがキテレツな値で競り落とされたのへ、
普通の競り値へ影響しなけりゃいいのだがなんて案じる声も出ていて、

 「いやいや、それはなかろうよ。」

夕張メロンの初競りにも途轍もない高値がつくのと一緒で、
一種の御祝儀みたいなもんじゃないの?と、
この年齢で既に
がっちがちの“現実主義者”で通っておいでの子悪魔様が、
それはないないとかぶりを振っていたくらい。

 「つか、解散総選挙も不景気な話なんか?」
 「政局が安定してりゃあ、まだ先の話だったんじゃね?」

一日の締めくくりには
ワールドサテライトニュースとか 視点論点とか
大人でも敬遠しちゃうお固い番組を
わざわざ観てるんじゃなかろうかという、
そんな想像をさせかねないお言葉が
ぽんぽんと飛び出すところが相変わらず。

 「こらぁ、そこの一回生っ。
  寒いからって手ぇ抜くなっ!」

ベンチからは遠いトラックを、
まずはの体慣らしにランニング中のお兄さんたちへ向けて、
スマホに集中しつつもちゃんと見てますよということか、
よく通るお声で、しかも堂々の名指しで檄を飛ばす、
何ともおっかない小学生。
うひゃあと肩をすくめて、足並みを速めた顔触れへ、

 「…ったく、S山は気が散りやすいのが難点だよな。」

練習試合とはいえ、ゲーム中でも うか〜っとしていて、
しょっちゅうインターセプトかまされてるから、

 「フルタイム出場はまだ早いんじゃね?」

的確なアドバイスも出せちゃう頼もしさだが、
あくまでも決定権はキャプテンのものということも
ちゃんとわきまえているところがまた、

 “よく出来た軍曹さんだよなぁ。”

キャプテンの葉柱と同じくらいのお付き合いとなろう、
彼の頼もしき双璧、
ツンさんや銀さんからも苦笑混じりに評価されておいでの
鬼軍曹こと、蛭魔さんチの妖一坊ちゃん。
先のライスボウルで
中高校から大学・社会人までの全日程を終えた
アメフトの前シーズンに早くも蓋をし。
今年こそは
1部リーグへ上がるぞとの意気込みの下。
小っちゃなその身へ
賊徒大学アメフト部
“フリル・ド・リザード”のウィンドブレーカを
一丁前に羽織って、
新春早々の寒稽古もどきへも
ちゃんと駆けつけている熱心さであり。
うむむと胸高に腕を組んで
グラウンドを見やる格好も勇ましいものの、

 「あ、いたいたvv」
 「きゃあ、かわいいvv」
 「ヨウイチく〜ん♪」

この寒空なのにもかかわらず、
練習見学と応援にと駆けつけてくださった女性陣があり、
選手それぞれの固定ファンも勿論いようが、
それらの中、ダントツ人気なのが、
こちらの小っちゃいコーチ殿だったりするのも相変わらず。
偉そうにしていても、ドスの利いた檄を飛ばしても、
それが自分へと向かってくるものでない限りは、
“かぁわい〜いvv”で済んでしまうのが
今時の女子の人の不思議なところで。

 “…まあ、それだけでもないでしょうけれど。”

というのは、
彼女らと同世代の女子の人、
マネージャーのメグさんの内心での呟きで。
だってこの坊や、相変わらずにその風貌が飛び抜けて愛らしい。
一見 女の子と見まごうほどに
華奢で伸びやかな肢体は可憐だし、
冬の乾いた陽に照らし出されている髪は
それは柔らかそうな金髪で。
それを冠した格好のお顔がまた、
そりゃあ愛くるしい造作をしておいで。
少々力んじゃあいるが、
まだまだ丸みの強いぱっちりした金茶の瞳に、
柔らかそうな小鼻と頬。
瑞々しい緋色の口元は意外と表情豊かで、
そこから紡がれる伸びやかなお声は
幼い小鳥みたいで愛らしく。
(檄を飛ばしてる声も聞いてるんでしょうにねぇ…。)

 「……あ、きよみお姉いちゃ〜んvv」

ギャラリーの中に顔見知りのお姉いさんがいれば、
暇な時だけの限定ながら、
にぱぁと微笑って愛想を振るのも忘れないとあって。
そんな坊やが見られるってだけでも、
わざわざ足を運ぶ価値があると言われているくらい。

 「冗談抜きに、
  最寄り駅から大学までの通りにあるパン屋やミニストアは
  俺らが入学した年度から、
  売上も目に見えて上がってるらしいぜ?」

 「そうそう。
  そんなだからか、買い出しに行くと
  気前よくおまけしまくってくれるのよね。」

 「…凄げぇ御利益だなぁ。」

こいつは春から縁起のいい話…としていいものか。
どこまで本当でどこから演技か、
底が知れないところも相変わらずな子悪魔様だが、

 「ル〜イ、今日ルイんチ寄ってっていいか?」

やはりバインダーを手に、
部員らのデータを見つつ練習試合のメンバーを検討中だった
皆の大将、頼れる総長こと、
キャプテンの葉柱さんの、
グラウンドコートの袖をおねだり口調で引っ張れば、

 「おお、母ちゃんも顔が見てぇって言ってたぞ。」

異存はありませんとのいわゆる“二つ返事”が返って来たのにね。
歓迎されてる言われようなのに、

 「何だよ、ルイはどうでもいいのかよ。」
 「いちいち突っ掛かるね、お前も。」

迷惑だったら勝手に来いって言うとるわと、
総長さんの大きな手で、髪をもしゃもしゃ掻き回されて。
あー、やったなぁと掴みかかり返すものの、

 “嬉しそうな顔して まあ。”×@

顔触れは限られるとは言え、
慣れから判る人には既にバレバレな、
隠し切れない“好き好き”だだ漏れの間柄なのも変わりなく。
さて、この一年はどんな年度になりますやら、


  皆様、どうかよろしくです





     〜Fine〜  13.01.07.


  *まだまだお寒い今日この頃ですね。
   今日あたりから、
   そろそろ通常運転となる方々も多いのでは?
   寒さ対策と手洗いを忘れず、
   どうかご自愛くださいませです。

ご感想はこちらvv めーるふぉーむvv

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